てんかんの診断の具体的方法
てんかんとは、国際てんかん連盟が定義している以下の3つの項目
- 24時間以上の間隔で、少なくとも2回の非誘発性発作(他の疾患や外傷等が原因で起こる発作ではないという意味)が生じている場合
- 1回目の発作だとしても、今後10年間のうち2回目の発作が起きる確率が60%以上だと言える場合
- 発作出現年齢や脳波状況、画像検査、運動・認知機能、神経症状等の所見でグループ分けされる、てんかん症候群の1つだと診断できる場合
のいずれかに該当するものを言い、この定義を基準に医師が治療を開始すると言えます。
てんかん診療ガイドラインによると、診断の具体的な流れとしてはまず年齢や発作状況、既往歴、他疾患、常用薬、家族歴、アルコール等の嗜好品等ついての問診から始めていきます。この問診によって、てんかん以外の可能性のおおまかな除外を行います。てんかんだと疑われる場合は、発作型(発作の原因となる異常放電が脳の1部分から始まるか全体から始まるか)の判断をする為に、CTやMRI等の画像検査、ビデオによる発作確認と脳波記録が行われることが多いです。
その後、運動・認知機能や神経症状等の所見も合わせて確認し、てんかん症候群に該当するかどうかの判断を行います。治療を開始する上で発作型と、てんかん症候群の分類(該当する場合)を判断することは今後の治療方針や治療薬の決定に非常に重要であり、確定診断までに時間がかかることもあります。
てんかんの初期症状の治療法
発作型やてんかん症候群、年齢によって治療方針は変わっていきますが、基本的に薬による治療を行います。薬物治療は、まず1種類の薬を少量から開始することが国内外問わず一般的です。その後副作用や効果を見ながら増量し、それでも発作が収まらない場合は次の候補薬を同じように少量から始め、増量していきます。1種類の薬で収まらない場合は、2種類以上の薬を使うことで症状をコントロールしていきます。
この初期段階の治療で有効であると考えられている薬は、発作型やてんかん症候群の分類によって異なる場合が多いです。よって、一定の治療期間を過ぎても治りが悪い場合にはもう一度検査をする等、診断をやり直すこともあります。その為、確定診断は非常に重要であると言えます。
治療薬以外の治療法
薬物治療以外の方法として開頭手術はもちろんですが、ここでは迷走神経刺激療法とケトン食療法という方法を紹介したいと思います。迷走神経刺激療法は、日本でてんかんを治療する際に参考とされる「てんかん診療ガイドライン」でも言及されており、日本でも2010年から保険適応となっています。この方法では、電気刺激を発する装置を左胸皮下に設置し、頚部の迷走神経を刺激することにより発作を抑えていきます。小児や全般性発作では有効性が高いとも言われており、アメリカでの研究によると約50%の発作減少率が見られるという報告もあります。しかし大規模な試験は行われていない為、この方法の使用や安全性・有効性に関しては担当の先生と相談することが重要です。
ケトン食療法は、炭水化物と比較して脂肪とタンパク質を多く摂取する食事療法です。一定のバランスで行うことにより、約50%の発作抑制が期待できると言われています。しかし、低血糖や吐き気、便秘または下痢、体重減少、活動低下等の副作用を生じることもある為、基本的には入院中に医師の指導のもと導入します。その為、自宅でインターネットの情報を元に始めることは危険です。
治療費用と手術が必要なケースについて
半数以上の方が薬物治療によって発作を抑えることが出来ると言われていますが、中には一度発作が収まったとしても再発を繰り返す方もいらっしゃいます。このような場合、薬物治療で試行錯誤を繰り返すか、手術により発作を根治または緩和する必要性があるか検討します。ただし開頭手術を行う場合は、異常放電を発する脳の場所を特定でき、かつ切除したとしても後遺症が残らないか、許容範囲となる必要があります。手術費用に関しては病院による面も多く、一概には言えないのが事実です。ただし、国立病院の調査によると、てんかんで入院する場合は「手術なし」だとしても平均約1週間入院し、支払いも13万円程度(健康保険で3割負担の場合)になるようです。治療費が高額になる場合は、病院のソーシャルワーカーに相談することで高額療養費制度(収入によって月の支払い限度額が決まる制度)の申請ができるように手助けしてくれる事もありますので、まずは病院に相談すると良いと思います。
てんかんに対して日常的にできる予防策
発作が起きにくくなるような予防策としては、いくつかの方法があります。第一に、規則正しい生活を心がけることです。脳に関連した慢性疾患であるてんかんでは、脳をしっかりと休めることが重要です。すなわち、睡眠不足は発作が起こる可能性を上げてしまいます。もちろん個人差はありますが、子供であれば8~10時間程度、大人であれば6~8時間程度睡眠を取るようにすると良いです。眠れないことを理由にお酒を飲むと、睡眠の質が下がり「寝ているのに疲れが取れない」という悪循環に陥る可能性があります。また、アルコールによっても発作が起きやすくなる可能性があります。この様に、睡眠はてんかん発作と大きく関係していることから、熟睡できる環境を作り上げることが重要です。それでも上手く眠れない場合は、しっかりと担当の先生に相談するようにしてください。
さらに、体内の薬物濃度を一定に保つことにより発作が抑えられている為、決められた服用量を守って忘れずに薬を飲み続けることも重要な予防策と言えます。毎日、医師・薬剤師から言われたタイミングで服用を続ける事が困難であることは事実であり、服用後に気になる副作用が出るのであれば、さらに薬を飲みたくなくなると思います。しかし、安全性・有効性の面で薬を飲むタイミングに制約のある薬が存在する一方で、タイミングは重要ではなく毎日同じ時間に飲めば良い薬もあります(例:食後に飲む必要性がない、または朝でなく夜でも良い等)。もし服用後の副作用や服用を忘れる事に関して悩んでいる場合は、担当の薬剤師・医師に相談することを推奨します。
参考文献