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てんかんの薬で副作用が出るケースとは

薬には、治療上で有効となる効果とは別に体にとって都合の悪い効果が出ることがあります。全てのお薬には副作用がつきもので、てんかんのお薬についても例外ではありません。

しかし、副作用の種類や発現時期については人によって様々で副作用がでない方もいます。一般的にてんかんのお薬で副作用が出やすいケースとしては以下のものがあります。

  • 薬の飲み始めたとき
  • 服用量が多い
  • 服用していた薬を自己判断で急にやめたとき
  • アレルギー反応によるもの

お薬を初めて飲む場合には薬の効果や副作用の有無を確認しながら、少量から徐々に服用量を増やしていくことが多いです。

また、症状が無くなったからと言って自己判断で薬の服用を急にやめると薬剤の血中濃度が急激に変化して副作用がでやすくなります。

抗てんかん薬に見られる副作用の種類

抗てんかん薬に見られる副作用の種類は、下記の通りです。

  • 精神症状
  • 情緒不安定
  • 認知機能低下
  • 体重増加

それぞれ順番に解説していきます。

精神症状

てんかんが脳神経の異常興奮が原因であることから、てんかんの治療薬も脳神経に作用するように作られています。そのため、てんかんの治療薬を使用することで精神症状が現れてしまうことがあります。

例えば、気分が落ち込んで悲観的な考えに縛られて、行動する意欲や楽しいという感情が低下してしまう「うつ状態」や存在しない声が聞こえる幻聴や存在しない物が見える幻視が起きたり、事実ではないことを事実と信じ切ってしまう妄想などが発現する「幻覚妄想状態」があります。

これらの副作用は自分では気付きにくいので周りの家族や友人が注意する必要があります。

情緒不安定

うつ状態や幻覚妄想状態とは別に情緒が不安定になる方もいます。

てんかんのお薬は脳の異常興奮抑える特性から、気分を調整する作用を持っている薬剤も存在して、イライラした気分を落ち着かせるものと落ち込んだ気分をあげるようにするものがあります。

薬の作用が悪い方向に働くとさらに気分が落ち込んだりしてうつ状態へ繋がることもあります。また、イライラが強くなって攻撃的になったり、突発的な行動が止められなくなり周りから見たら異常な行動をとってしまうこともあります。

小児では多動が伴うこともあります。

認知機能低下

てんかんの薬によって脳の異常興奮を抑えるだけでなく、正常の機能まで低下させてしまうこともあります。

理解、判断、記憶、計算、学習、言語などに関わる能力のことを認知機能といいます。これらの機能が低下することで、仕事や学校での学習、友人や家族との会話など日常生活において大きな支障をきたすことになってしまいます。

高齢者の場合には認知症と間違われてしまうこともあるので注意が必要となります。

体重増加

脳の中には食欲を調節する食欲中枢という部分が存在しています。てんかんの薬の中にはこの食欲中枢を刺激してしまうものも存在しています。

食欲中枢が刺激されることで食欲が止まらなくなるので太ることがあります。

逆に食欲中枢が抑制されてしまう方向に作用すると食欲不振になって体重が低下することもあります。

その他にも眠気、めまい、吐き気、ふらつき、脱力感、歯茎の腫れ(歯肉増殖)、尿路結石など様々な副作用が存在しています。

てんかん症状や発作を悪化させる可能性がある薬

てんかんのお薬の中にはてんかんを悪化させたり誘発させてしまうものも存在しています。てんかんの薬でてんかんが誘発されるのは不思議なことですが、特定のてんかんには効果があるが、その他のてんかんを誘発してしまうパターンと過量投与でてんかんが誘発されてしまう場合があります。

クロナゼパム

睡眠中に目を開いて呼放が乱れるなど軽度の強直発作を誘発することがあります。日中には気づかれにくいため放置されることもありますので注意が必要です。

カルバマゼピン

欠神発作、ミオクロニー発作を誘発することがあります。

欠神発作は痙攣を伴わず数十秒間にわたり意識がなくなる発作です。

ミオクロニー発作は全身か手足の一部の筋肉がピクッと収縮する発作でひどくなると転倒したり、持っているものを投げてしまうこともあります。

高濃度フェニトイン

発生頻度は高くはありませんが、発作の頻度を上昇させるという報告がされています。

フェノバルビタール

過量投与することで欠神発作を誘発することがあります。

上記以外にも様々なてんかんの薬にはてんかんを誘発するものが存在しますが、症状がでたからといって急に薬剤の服用をやめてしまうと離脱性発作というものを起こしてしまうので徐々に減らしていくことが必要です。

副作用への対処法、付き合い方

てんかんの薬を服用して副作用が出たとしても自己判断でやめないで、すぐに医師に相談することが大事です。薬の服用を止めることで発作を誘発してしまうことがあるからです。

また、発作が繰り返して起きてしまう場合には日常生活を送ることが難しくなったり、症状が進行することで命に関わってしまうこともありますので、副作用が出たとしても治療効果と副作用のバランスを見ながら服用を続ける必要がある場合もあります。

わずかな変化でも副作用の前兆であることもあります。てんかん薬の副作用について知識があれば些細なことでも気付きやすくなります。

気になることがあればすぐに主治医に相談しましょう。

参考文献

抗てんかん薬の副作用 – 愛知県青い鳥医療療育センター

堀田秀樹,浜野晋一郎,福島清美(1990)「バルプロ酸による体重増加および夜尿について」:てんかん研究 J-STAGE

抗てんかん薬が情緒に与える影響-てんかん情報センター

転換に伴う精神症状について-大阪大学医学部附属病院てんかんセンター

認知機能 e-ヘルスネット

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