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日本では大麻の所持や栽培、譲受などの行為が「大麻取締法」によって禁止されています。

では、仮に大麻が合法の国で日本人が大麻を使った治療を受けた場合、日本に帰国後に処罰の対象になるのでしょうか?

医療大麻の治療を受ける患者さんが気になる法律に関する課題を整理して解説します。

 

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なお、2023年11月10日、大麻関連法令改定に関する国会答弁にて厚生労働大臣が、正式見解を公表していますので、その記事をBlogに更新いたしました。併せてご一読ください。

4;52;00あたりから答弁があります。

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医療大麻も日本国内では違法

前提として日本国内では、嗜好目的の大麻はもちろん、たとえ医療目的であっても大麻をもちいることは違法行為となります。これは大麻取締法4条の3で「大麻から製造された医薬品の施用を受けること」も禁止しているからです。

もし、大麻をもちいた治療をした場合、医師だけでなく、患者さん自身も逮捕されてしまいます。

現状では、医療大麻による治療を望むのであれば、海外で治療を受ける以外に方法はありません。

海外での医療大麻治療の課題は国外犯規定

日本の刑法が適用されるのは、基本的に日本国内で行われた犯罪です。このことからすると、海外で大麻を所持しても処罰されないように思われます。

しかし、刑法には「国外犯規定」があり、一定の犯罪については日本国外で行われた場合にも適用されます。国外犯規定の目的は「日本国外で行われる犯罪であっても日本の国の存続を脅かす可能性のあるもの」を抑制して、日本という国を守ることです。これを「保護主義」といいます。たとえば内乱罪や通貨偽造罪などが国外犯の対象になっています。

実は大麻取締法にも国外犯規定があります。大麻取締法24条の8では、日本国外で大麻を所持・栽培、譲受、譲渡などの行為を行った場合には国外であっても処罰の対象となると定められています。このことからすると、日本人が海外で大麻を所持した場合にも処罰されることになります。

医療大麻の使用は処罰されていない

大麻取締法には国外犯規定はありますが、実際には海外で医療大麻を使用しても、きちんと正しい手続きを踏んでいればほぼ処罰されません。

現実に海外で医療大麻治療を受けている日本人の患者さんも多くいらっしゃいます。

その理由や現状を以下で説明していきます。

日本人が海外で医療大麻治療を受ける場合、大麻が合法とされているアメリカやカナダへ渡航するケースが多数です。インターネット上でも医療大麻治療を考える民間非営利団体(NPO)などが「日本人が海外で医療大麻治療を受ける方法」を紹介しており、実際に医療大麻治療を受けた人による説明記事が掲載されています。

参考:http://iryotaima.net/?page_id=1390

こういった情報が大々的にインターネット上に投稿されていて、日本の警察や政府から何の指導も受けていない事実は、医療大麻が合法的な国における治療目的による使用にほぼ問題がないことの一つを示しているといえるでしょう。

国外犯規定が適用されない理由

それでは法律的に海外での医療大麻の施用が違法ではないといえるのでしょうか?大麻取締法の国外犯規定によって処罰される可能性があるのかをみていきましょう。

医師の処方は「正当な理由」

確かに大麻取締法や刑法の条文上、国外で大麻を使用した想定した場合、処罰対象になります。ただ大麻の使用が処罰されるのは「みだりに」使用した場合です。「みだりに」とは「むやみやたらに」とか「正当な理由もないのに」という意味です。

大麻使用が合法とされている国で、治療目的で現地の医師の診断の結果、医師による管理のもとで大麻を利用したとしても「みだりに」とはいいがたいでしょう。

実際、甲南大学の園田寿教授(弁護士)も、海外での医療目的における大麻使用は大麻取締法の国外犯規定の適用を受けないとおっしゃっておられます。同じ趣旨の有力な学説も存在します(植村立郎「大麻取締法」注解特別刑法5-II医事・薬事編(2)[第2版]VII、97頁)。

一般に「みだりに」とは、違法性を意味する言葉であり、日本国内であれば日本法に違反することであり、国外であれば、その行為が行われた国の法令に違反するとともに、その行為が日本で行われたとすれば、日本法にも違反するという意味です。つまり、「みだりに」といえるためには、日本だけではなく、その国でも違法性を有し、処罰可能でなければなりません。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sonodahisashi/20181018-00100964/

医師や病院の管理下にある大麻は「所持」とはいいがたい

また、その国の公的なライセンスをもった病院や医師が医療大麻の投与や保管をする場合、患者さんが「所持」したとしてこれを適応させることも難しいといえます。

たとえばケシを原料とした「モルヒネ」は、麻薬及び向精神薬取締法により、利用や所持などがそのほかの麻薬と同じように禁止されています。しかし、医療用麻薬として麻薬免許、麻薬管理、施用管理がされている病院であれば、日本国内であっても、患者さんが「所持」で処罰されることはありません。

大麻取締法4条3号は国外犯規定の対象外

前述の大麻取締法4条3号「大麻から製造された医薬品の施用を受けること」は、そもそも国外犯規定の対象になっていません(大麻取締法24条の8参照)。海外であれば医療大麻の治療をうけることに問題はないと考えられます。

世界主義の適用もない

なお刑法は「国外犯であっても条約によって定められた一定の犯罪については処罰対象とする」という条文をおいています(4条の2)。これは各国で協力して撲滅すべき犯罪については国外犯であっても処罰しようという「世界主義」の条文です。大麻取締法については4条の2の適用対象ではないので、これによって処罰を受ける可能性もありません。

以上からすると、医療目的で大麻が合法的な国に渡航して医師の指示管理のもとに医療大麻による治療を受けたとしても、大麻取締法違反の罪が成立する可能性は極めて低いといえます。

大麻取締法の適用を受けない3つの条件

海外での医療大麻治療によって大麻取締法違反にならないためには、以下の条件を満たさねばなりません。

条件1 医療大麻が合法とされる国で処置を受けること

1つめは、当然ながら大麻使用が合法的な国の「国内」で処置を受けることです。現地で医療大麻を使用する場合には処罰されなくても、日本に持ち帰ると処罰対象になります。

たとえばアメリカで大麻の処方を受けた場合でも、日本に持ち帰ったらそれだけで「輸入罪」が成立してしまうので注意が必要です。

条件2 医療大麻専門医の処置を受けること

2つめは、医療大麻専門医による指導と処置を受けることです。大麻が合法とされる国内であっても、医師による診察もなしにやみくもに自己判断で大麻を利用したら大麻取締法の国外犯規定が適用されて処罰される可能性があります。

必ず「大麻専門医」にコンタクトを取り診察を受けて「医療大麻使用による治療が有効」という診断を受けなければなりません。

条件3 病院が医療大麻を管理・監督をすること

3つめの条件として、医療大麻の保存に関して医師や病院による管理・監督を受ける必要があります。大麻が合法的な国であっても治療目的であっても、患者が勝手に大麻を購入し、自己判断でやみくもに使用してはなりません。

たとえば医師による「医療大麻使用による治療が有効」という診断を受けていても、患者本人が薬局ではない場所で「嗜好品としての大麻」を勝手に購入して使ってはいけません。大麻取締法違反(所持)となる可能性があります。

そうではなく、医師や病院が患者に対する大麻の施用だけでなく、保存(所持)もコントロールしている状態を維持しましょう。

大麻使用は日本でも処罰の対象外

日本の大麻取締法の規定内容についても知識を持っておきましょう。

実は日本の大麻取締法では「使用」や「吸引」が禁止されていません。禁止されるのは、所持、輸出入、譲受や譲渡などです。テレビのニュースなどで大麻取締法違反による逮捕される事例をみかけますが、たいてい「所持」によるものです。

医療大麻でも嗜好品としての大麻でも「使用」については「そもそも処罰対象にならない」ことを覚えておきましょう。

まとめ

海外で医療大麻を用いた治療を受けるうえで大切なことは、たとえ医療大麻が合法な国であっても国外犯規定の適用をうけないために、医療大麻を自分で所持せず医師や病院が公的なライセンスのもとに厳密に管理している医療大麻を施用してもらうことです。

医師による診断のもとに適切な「治療」として医療大麻を使用する限度では、問題になる可能性は極めて低いと考えられます。

 

By 福谷陽子(Yoko Fukutani)

元弁護士・法律ライター
Former lawyer and legal writer

約10年にわたる弁護士としての経験を活かして法律ライターとして活動。現役時代には多数の薬物犯罪の刑事弁護などを取り扱っていた。正確な法律知識を持ち、各種法律メディアで執筆や監修を行っている。

2001年司法試験合格
2002年京都大学法学部卒業
2003年司法修習(第57期)

A former lawyer and legal writer with about 10 years of experience as a lawyer. During her active career, she handled criminal defense for many drug crimes. With accurate, legal knowledge, she writes and supervises for various legal media.

Passed the bar examination in 2001
Graduated from Kyoto University Faculty of Law in 2002
Legal apprenticeship (57th), 2003

運営メディア(Media)
https://legalharuka.com/
https://twitter.com/pirica8

 

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